夢の海

――すべてうつろうその果てに――

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田舎の道

田舎の道


この道を行くと何がある?

変わったものは何もない。
誰でも知ってる、何があるか。

ほら、あの老母と一人息子の家だよ。
その先には沢の近くに住んでる昔からの一家の分家。
小学校に抜ける小道もある。

おや、ここのうちの畑はもう作業を済ませてるね。
ここの田んぼはもう何年も休耕したままだ。

この道を行くと何がある?
変わったものは何もない。

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かわい子ちゃん

飲み会。総勢10人。
たまたま斜め向かいに中年男性、向かいはまだ到着していない若い女の子。

「○○さん、遅いですね」
「ああ。だって遠いよね。横浜からでしょ?」
「○○さんに会うの久しぶりなんですよ。早く会いたいです。可愛いですよね~、○○さん」
「可愛い!?」
「可愛いですよ!」
「ふぅ~ん。やっぱり、あれだね。女性と男性では見方が違うんだね。僕はあんまり――」
「そうですか!? 可愛いじゃないですか、○○さん」
「可愛いかねぇ。いや、分かんないなぁ」

そういうものだろうか。
○○さんは可愛いけど。
目はくりくりしているし、まだ20代で、おっとりした話し方。好みはあると思うけれど、「自分は好みじゃないけど」と言ったとしても、たいていの人が「悪くない顔」と認める容姿。――だってたいていの人が「決して美人とは言えない容姿」と思う人だっているんだから。

自分が明らかに「まあ、誰が見ても、美人だとは言わないだろう容姿」のわたしから見たら、万人が認める可愛らしい人だ。

「すみません。遅くなりましたぁ」
「○○さん! 座って座って~!」

落ち着いて会話が流れに乗り始めると――

「私は、やっぱり、あの、××が、**で、・・・だと思うんですよ――」
「ああ、そうなの」

わたしはふと目を疑う。
『ああ、そうなの』とそっけない口調で言うその男性の目は、うっとりとゆるんで口元もゆるんでいる。

なんといっても、やっぱり彼女は可愛いのだ。

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秋、深まる

秋、深まる


秋が深まっていく。

どんどん落ちていく葉、
次第にあらわになっていく幹、
澄んだ青を通り越して透明になっていく空。

木々を黒々と輝かせる日差しの傾斜。

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苦難か逃げか

「この特集はどうでした? 職場でのうつについて、どのような症状が出るかから治療、回復まで分かりやすかったと思いますけど」
「そうですね・・・」
「イラストも多用して、重すぎないイメージと読みやすさ、分かりやすさを心がけている特集ですよね」
「私はいいと思いませんでした。自分が『うつ』ではないから、気持ちが分からなかっただけでしょうか」
「・・・・・・」
「私も職場で、うつになるほど――なりたいほど嫌なことがたくさんありましたよ。でも乗り越えました。乗り越えるしかなかったから。だから『うつ』『うつ』と言うのは逃げだと感じるんです」

なるほど。

辛い思いをしても、会社を辞めるわけにもいかず、どうにもならず、なんとか頑張らなきゃならないですものね。

でも「うつ」の人も、辞めるわけにもいかず、それでも辞めざるを得なかったら後の生活に苦労があったりして、辛いだろうと思います。「うつだ」と言ったところで問題が解決するわけではなく、結局、なんとかするしかないことは同じですよね。

だけど、自分は一人で頑張らなきゃならなかった。頑張れないところまでも頑張った。なのに「うつだから」と周囲に理解を求めたり、家族や友人や医師が同情してくれたりするのを見ると、「私は一人で頑張ったわよ」と思えてしまう。わたしも同じ気持ちになったことがありましたよ。だからすごくよく分かります。

うつの人を知ってもいる。だからうつの人が大変な思いをして、治したいのになかなか治らなくて、必死で頑張っているのも分かっています。

でもこのイラストの人は「重すぎない」。だから余計ですよね。辛くて辛くて、でも治らなくて辛いままでいる人が「うつだから」と言っても反感はわかないけれど、こんな可愛いイラストでちょっとストレスがたまって「なんか会社に行きたくない。お腹が痛い気がする」「うつだったのね」って言われたら――。なんだか逃げているようで、ずるいようで、納得いきませんよね。

境目って難しい。うつという「病気」になった人は、自分ではどうしようもない。だから病気。治療をしなければ治らない。病気の人に対して「逃げ」とは思わない。
でもどこからが本当に病気で、どこまでが甘えや逃げなのか分からないから、難しいのね。

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赤と緑

赤と緑


赤くならない常緑の葉と、
真っ赤に燃えている紅葉の葉。

競い合うように枝を伸ばしている。

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彼女の結婚 その2

 彼女はもう42歳。周囲の皆は、もう結婚はしないつもりなのかと思っていた。年齢のためというより、独身生活が性にあっているように見えたのと、まったく焦っていなかったためだ。
 つきあっている人はいると言いながら、「うーん、結婚はまだいいかな」というところから何年経っても抜け出さない。したくないというわけでもないけど、したいと思ってもいない。飄々としていた。
 ある日、久しぶりに暑中見舞いが届き、こんな文章があった。
「○○ちゃん、覚えてる? 中学のときの部活の仲間。この間、彼女と彼女のお子さんたちに会ったの。もう二人とも大きくて高校生と中学生。彼女は結婚してからずっと相手のご両親と暮らしてて、いろんなことがあったんだよね。そういうことを乗り越えて、今は別々に暮らしてる。彼女の話を聞いてると、自分がどんなに薄っぺらい人生を送ってきたか考えさせられる。そろそろ生活の基盤をしっかりと立てなければならない時期なのかなって思ってる」
 そして2ヶ月後、彼女からまたハガキが届いた。わたしが返事を送ったので、またそのお返事。
「同じ部活だった××ちゃんの紹介で会った人がいい人で、闘病してるんだけど、この人なら応援できるかなって思えるの。籍を入れて一緒に暮らそうと考えてます」
 いざ一緒に住もうと決めてみると、いろいろなことが分かってくる。
 相手は家事は女性がするものと素直に当たり前に考えているみたいだとか。簡単に考えていたけれど、親にとっては「一緒に住むというならきちんとしなさい」ということだったとか。彼女がどっぷりハマっている趣味を今後も同じペースで続けていくつもりであることも、彼はどう受け止めたろう。
 そういうことを彼女は独身を続けていたときと同じように、飄々と語る。
「どうもそう考えているみたいなんだよね。これはまずいから、いずれ直してもらうことになると思うんだ」「これからも自分の趣味は続けていくよ。週末はいつも家にいないくらいハマってるんだけど、それは寂しくても我慢してもらうしかないね」
 やがて時が経ったら、「やっぱり隔週くらいで彼にも付き合わないとと思い始めた」と言うかもしれない。「子供もできたら生みたいよ」と言っていたから、子供ができたら変わらざるを得なくなるかもしれない。それとも彼に子供を預けて週末は出かけるかもしれない。
 結婚してもいいかなという判断もあっさり決めた彼女。闘病している人と一緒に暮らすという決断も飄々と下した彼女。
 これからもそうやってその時々の気持ちや考えに合わせて、さらさらと流れるようにやっていくのかもしれない。

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常緑の松

常緑の松


秋はもうやってきて、
葉はもう赤く、または黄色くなり、
落ち始める茶色の葉もあるけれど、

冬の予感をものともせず、
すっくと背を伸ばし、葉を落とさず、
冷たい風が吹く日を怖がらない、

強さか、虚勢か、
いずれにしても屈しないと宣言している、
松がいる。

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彼女の結婚 その1

 彼女は37歳。結婚したいと言い続けているけれど、ここまで縁がなかった。自分はもうダメだという気がしてきていた。
 友達の同僚の紹介で、「正社員で彼女が専業主婦になってもいいと言えるだけの低収入あり。結婚を前提としたつきあい可」の男性と出会った。
 若い頃は、つきあう男性にいろいろと希望のあった彼女だが、今の希望はとにかく「結婚してくれる人」だけ。
 とにかく嫌いではない。生理的に受け付けないとか、第一印象からして最悪とかいうことはない。つまり「一緒にいて嫌じゃない」。つまり「結婚してもいいかな」。
 めでたく彼女の側は受け入れ完了である。
 「シロガネーゼとは言わない、アザミネーゼでもいい」と言っていた彼女の前提条件は、「節約の日々でもいい、自分が働かなくてよければいい」に変わっている。もともと容姿にはこだわらなかった。男性は「デート費用を全額出すことはもちろん、常に女性をエスコートすべき」と思っていた彼女の条件は、前につきあった人が逆に彼女に全額出させたりしたので、だいぶ和らいだ。
「だんだん彼のことが好きになってきちゃったんだ。今は会えない日があると寂しくて。でもあんまりしつこくすると嫌われるかもしれないから、メールもそんなにしてないんだけど」
「彼のことを見てると、可愛いなとかかっこいいなって思うようになってきた。こんなに好きになれるなんて、思ってなかった」
「もうすぐ私の誕生日だけど、その日彼は趣味の釣りに行くんだって。たぶんプレゼントはくれると思うんだけど。でもさ、誕生日一緒に過ごそうって気を遣ってくれない人でも、結婚してくれるなら文句はないんだけどね」
 彼女の「愛」には「結婚したい」という願望による贔屓目が入っているかもしれない。少しは――あるいは多分に。
 でもそれはそれでいいのだと思う。
 きっかけはどうあれ、その人に好意を持つ。その人と一緒にやっていきたいと思う。結婚生活をしていく上で、楽しいことも苦しいことも味わって、絆が深くなっていく。
 昔はお見合い結婚もよくあって、幸せに暮らす人も多かった。うまくいかないまま結婚を続けるお見合いもあったけど、恋愛結婚でもうまくいかなくなることはある。
 「結婚したいから他のことは目をつぶる」というのは、生きることに貪欲なのだとまぶしく思える。「結婚したい」という願望のために、つまり人生における目標のために、愛まで生まれる。赦しも生まれる。
 人生への気力を失っていた彼女が、今やそんなふうに貪欲に生きているのも、幸せなことだと思う。

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窓越しの山

窓越しの山


窓越しに見る常緑の山も、
ところどころ色が変わっていて、
秋が来たことが分かる。

窓越しに見る晴天の空も、
雲の形も蒼の色も変わってきて、
秋が来たことが分かる。

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