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夢の海

――すべてうつろうその果てに――

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闇に光を より

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闇に光を より

ヘレン・ケラー

(『Midstream』 1929)



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  私の庭の周囲にある常緑樹に囲まれた六月は、芳香のふしぎな緯(よこいと)であります.常緑樹や汀(みぎわ)の草の間には、ライラックや月桂樹の芳香が縫うように漂っております。私の行く道のかたわらに美しい色とりどりの花が咲き乱れ、かわいい顔で私を見上げてくれます。柔らかい草のはえているところでは、スミレが碧い瞳を見開いてふしぎそうに私をながめます。私はスミレとスズランとは夢の花だと思っております。というのは、これらの花はいつも眠りの園に咲いているからであります。スイカズラはイボタノキの壁にはい上がって微風に薫香を送っております。ワイギーラは生霊のような蔓を伸ばして私に抱きかかろうとします。それをはらいのけようとすると、その実をついばみに来る翅(はね)のある略奪者が、日光の中へさっと飛び散ります。日本とドイツから来た丈の高いハナショウブが、あずまやの周囲に園丁がつけてくれたリボンのような道に沿うて美しい花を咲かせます。庭の片隅にはライラックの繁みがあります。六月になると枝もたわわに花をつけて、心にしみいるような芳香!・・・・・・といってもライラックの香をほんとうに言葉に表した人はありませんが。

  五月から六月の初めにかけては、燃ゆる汐のようなチューリップが芝生いちめんに咲いて、ここそこには紫水仙、ヒヤシンスその他の花の島々ができるのです。その島の一つに触れると、手の中でユリが生まれ、腕の届くかぎり同じような奇跡が行われます。こうして自らの生命を与えることによって、生きる愛が私のエデンを占領したのであります。
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